Case

THP認定衛生士による症例

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当医院には9名の歯科衛生士が
在籍しています。
内4名が、歯周病治療の
高いスキルと知識を身につけた
THP認定の歯科衛生士です。

担当:歯科衛生士 NKさん

Case 1

歯科医院で行う
トータルヘルスケアの重要性

医科歯科連携で歯周病と糖尿病が
著しく改善した症例

糖尿病の指標となる数値、
血糖値・ヘモグロビンA1cが改善

  • 血糖値
  • ヘモグロビンA1c

症例

患者様情報

患者
T・Yさん 男性 62歳 
街造りのプランナー
主訴
  • 歯周病が気になる
    (上の左右奥歯から時々出血・腫れ)
  • 口臭が気になる
    (起床時の口のネバつき・不快感)
歯科的既往歴
1年ほど前から口臭と上顎左右臼歯の歯肉の腫れを自覚。
徐々に症状が悪化してきたため他院歯科を受診。
歯周病と診断されたが、対症療法のみで、症状を繰り返すため根本治療を求めて当院受診。
喫煙歴
20歳~40歳まで喫煙歴あり
全身状態
患者はこれまで病院嫌いで、健康診断などは長年受けていないので分からないとのこと。

診断と治療計画

  • *

    治療前の口腔内写真

  • 歯根が割れている抜歯適応の歯

    治療前のレントゲン写真

診断
慢性歯周炎 左上7(上顎左側第2大臼歯)、左上5(上顎左側第2小臼歯)、右上5(上顎右側第2小臼歯)、右上7(上顎右側第2大臼歯)に歯根破折が見られます。
治療計画:THP8回コース(SRP6回)
THP終了後に歯根破折している左上7(上顎左側第2大臼歯)、左上5(上顎左側第2小臼歯)、右上5(上顎右側第2小臼歯)、右上7(上顎右側第2大臼歯)の抜歯を行います。その後デンチャーを作成していきます。

治療の結果

歯周組織精密検査表の改善

  • 20190325
    • PCR(磨き残し):34.8%
    • BOP(出血):47.1%
    • 4~6mm(歯周ポケットの深さ):59.4%

    色がついてる箇所が多くカラフルなほど症状が悪く、磨き残し、出血、排膿、深い歯周ポケット、歯の動揺が見られます。

  • 20190717
    • PCR(磨き残し):5.4%
    • BOP(出血):3.6%
    • 4~6mm(歯周ポケットの深さ):14.5%

    磨き残し、出血、歯周ポケットの深さ共に数値が下がり、カラフルから良い状態を示すモノトーンに変化したことで歯周組織が改善されたことが解ります。

位相差顕微鏡像の改善
(細菌レベルの改善)

  • 初診時 悪玉細菌優位

    活発に動くスピロヘーター(らせん菌)や運動性桿菌などの悪玉細菌が多く見られます。

  • 治療後 善玉細菌優位

    悪玉細菌が激減して活動性も低くなり、日和見菌、善玉細菌が多く占めています。

遺伝子検査リアルタイムPCR法の改善(遺伝子レベルの改善)

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重度の歯周病の原因となる3菌種(P.g菌・T.d菌・T.f菌)のレッドコンプレックス合計が基準値を大幅に超えていましたが、治療後の合計値が0になり激減して基準値以内に治まりました。同じく基準値を超えていた極悪細菌(F.n菌)も基準値以内まで下がりました。

レッドコンプレックスとは

歯周病菌極悪3菌種レッドコンプレックス

重度の歯周病に影響があると言われている歯周病極悪3菌種(P.g菌、T.d菌、T.f菌)です。
位相差顕微鏡で確認できるのはT.d菌のみで、P.g菌とT.f菌は非常に小さい桿菌なので顕微鏡では判別できません。
そのためにリアルタイムPCR法による遺伝子診断が必要になります。
リアルタイムPCR法では、どの歯周病菌がどれだけいるかはっきりと数字で示されます。

オーラルクロマ比較による
口腔内細菌の産生する
悪臭ガス(口臭)の低減

  • 初診時
  • 治療後

もともと口臭は少なかったが、細菌が産生する口臭ガスの硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドの発生が治療後更に減少しました。

糖尿病数値の改善(血液検査)

  • 血糖値
  • ヘモグロビンA1c

この患者様の場合、歯周病治療前の血液検査で糖尿病が発覚し緊急入院となったため歯周病治療だけでここまで改善した訳ではないですが、糖尿病の状態を改善させることで歯周病治療も良い結果に導くことが出来ました。
また、生活習慣等の改善もかなり協力的で患者様の頑張りも大きく関係しています。

糖尿病と歯周病

糖尿病は
歯周病を悪化させる
HbA1cが6.5~7.0あたりから歯周病を悪化させるリスクが高くなり、
HbA1cが9を超えると
歯周病悪化の十分なリスク因子になると推測されます。


今回THPを行った患者様の初回簡易血糖値は392mg/dL
→HbA1c を推定するとおおよそ11(7.0以上で合併症が疑われる)
(簡易の推定平均血糖値=HbA1c−2×30)

以上の点から明らかな糖尿病であり、
合併症の疑いから内科受診を先行しました。
歯科医院としての役割
成人の5~6人に一人は糖尿病あるいは耐糖能異常を有する状態です。
糖尿病予備軍や糖尿病初期の段階では、歯科医院での適切な食事・運動療法や歯周病治療を行うことができれば糖尿病などの症状を改善させることも可能です。
スクリーニング・事前検査の重要性
糖尿病の合併症により患者様のQOLの低下はもちろん、医療経済的にも負担がかかります。今回の患者様の糖尿病を伴った症例をきっかけに、THPを行う患者様には中垣歯科併設の内科で血液・尿検査を行うことになりました。
健常者や糖尿病予備軍も訪れる歯科医院の大きな役割として、医科歯科連携の事前検査で糖尿病や合併症の早期発見、初期段階の歯周病治療で患者様の歯と体の健康を守ります。

治療を終えて

THPを受けた患者様の声

今回THPを行った患者様は、当院への受診がきっかけでご自身の全身状態を把握し、生活習慣が大きく変わりました。
悩みであった口臭の改善はもちろん、口の中の爽快感、そして何より
「中垣歯科医院に来て、今までの考え方が大きく変わった。口の中だけでなく全身も健康にしてもらった」と言って頂いたことがとても嬉しかったです。

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