Periodontal disease
例えば、歯肉からの出血(歯周病)が主訴で、歯科医院を受診した患者さんがいます。
全身疾患が無いかという問診で、通院・投薬中の高血圧の症状があり、それに歯周病が関与していることがわかりました。
このとき、患者さんが自覚している症状は高血圧のみです。
しかし水面下では、本人は気がついていないだけで、動脈硬化、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞やアルツハイマーなど、
歯周病が関与している疾患が密かに始まり進行しているかも知れません。
トレポネーマ・デンティコーラ(T.d菌)とポルフィノモナス・ジンジバリス(P.g菌)はレッドコンプレックスと呼ばれている極悪歯周病菌の3菌種の内の2菌種で、NHKの健康番組「試してガッテン」で【ジンの輔】【ヘビ蔵】とあだ名をつけられてイラストと共にお茶の間レベルまで紹介された、今注目されている話題の歯周病菌です。
これらの悪玉細菌たちが、歯を支えている歯周組織(骨・歯肉)を破壊、歯周病を重篤化させ、全身の健康被害を引き起こしてしまうのです。
PG菌・TD菌・TF菌は、歯周病において最も高い病原性を持ち、「レッドコンプレックス」と呼ばれる危険な菌群です。これらの菌は互いに栄養を共有し合い、その結果、病原性がさらに強化されます。特にPG菌は、その遺伝子型によって病原性が異なり、6種類の中でもⅡ型が最も強い病原性を持つとされています。PG菌は18歳頃から口腔内に定着し、唾液を介して感染しますが、すぐに歯周病を発症するわけではなく、口腔の抵抗力が大きく影響します。
TD菌やTF菌は幼少期に定着し、PG菌は18歳以降に感染し始めますが、20代後半までに各個人の口腔内の菌叢は確立されます。この時点でPG菌が存在していても、健康な歯周組織があれば菌と共存することが可能です。しかし、中年期に差し掛かり、歯周組織の抵抗力が低下すると、歯周病が発症する可能性が高くなります。
PG菌の感染経路である唾液感染には注意が必要です。例えば、親子間や恋人同士など、日常的に唾液が共有される場面でPG菌が感染するリスクがあります。しかし、PG菌が感染したとしても、すぐに歯周病が進行するわけではなく、感染後しばらくは抵抗力によって歯周組織が守られる場合もあります。
歯周病は、歯周組織と病原菌の均衡が崩れたときに発症します。特に、中年期には、ストレスや生活習慣の変化などがきっかけで、歯周組織の抵抗力が低下し、歯周病のリスクが高まります。PG菌は、このバランスが崩れたときに病原性を発揮し、歯周組織を攻撃するようになります。
これらの情報を踏まえ、歯周病予防のためには、定期的な歯科検診や適切な口腔ケアが不可欠です。特に、唾液感染を防ぐための注意を怠らないことが重要です。
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鶴見大学歯学部探索歯学講座 花田信弘教授の報告によると、歯石取りを行った90秒後、腕から採血し、その血液を培養すると歯周病菌が検出されます。歯石取りにより、歯周病菌などの細菌が血流に乗って全身を巡る菌血症が起きている証拠です!
歯科医院で歯石取りや抜歯などの観血的処置(出血を伴う処置)を受けた直後の3日間は献血できないことをご存知ですか?
日本赤十字社は歯科で歯石取りや抜歯など観血的処置を行った後、3日以内の献血は受付けていません。
観血的処置時に傷口から侵入した口腔内の悪玉細菌(歯周病菌など)が血液内に3日間は残っているため、輸血を受けた患者さんに深刻な影響を及ぼす危険性があるからです。
このことは輸血を受けた患者さんだけでなく、歯石取りや抜歯などの観血的処置を受けた本人にも直接深刻な影響を及ぼすことを意味します。